TMオフィス地方の魅力発掘プロジェクト
一合の純米酒が農家を救う

 米どころ秋田県の酒蔵が「大人一人、1日1合の純米酒を飲んで、日本の田んぼを救おう」と呼びかける「純米酒1日1合運動」を始めた。呼びかけ人は創業約160年の歴史を誇る老舗(しにせ)酒蔵「新政酒蔵」専務の佐藤Y祐輔(ゆうすけ)さん(34)。
 きっかけはフードエディターの山本洋子さんが10月に出版した「純米酒BOOK」(グラフ社)だった。何気なく手にとったが、冒頭に書かれている一文「田んぼの復権の鍵は純米酒にあり」を目にして、心から共鳴したという。
 「まさにその通りだと思いました。私たちは秋田の米でおいしい酒を造るために、この地に酒蔵をつくりました。しかし、農家の皆さんが苦しむ現実を目の当たりにし、農家を救うには米の消費しかないと常々実感していたんです」
 日本酒はもともと、米だけで造られていた。しかし戦後、米不足を補うために醸造用アルコールを添加することが許され、それ以来、純米酒の方が珍しくなってしまった。


「田んぼのために1日1合純米酒を飲もう」と呼びかける佐藤祐輔さん(右)。首かけ札は「純米酒BOOK」著者の直筆だ

  一方、米は過不足が起こらないよう農協(現在のJA)が一括で買い取り、質に関係なく平均価格をつけるようになったため、農家の努力は評価されなくなってしまった。その結果、廃業する農家が増え「減反政策」が敷かれたのである。
 この問題を解決するには、地産地消で地元の米を消費するしかなく、純米酒はその大切な役割を担っているという。
 新政酒蔵は地元でも有数の老舗だが、現在、酒造り職人の平均年齢は33歳。伝統の銘酒だけでなく、最近は斬新な酒造りにも取り組んでいる。もちろん、味にはとことんこだわり、今年の東北清酒鑑評会では、吟醸の部、純米の部でダブル金賞を受賞した。
 「純米酒は米だけで造るので米と同じです。だから純米酒を1日1合飲むことで、これ以上減反する必要がなくなり、農家を救うことができるんです。私は以前から、酒蔵が自ら行動を起こさなければ何も変わらないと思っていました。そんな時に『純米酒BOOK』に出会ったんです。今、動かなければ手遅れになると思いました」
 佐藤さんはさっそく、つくりたての純米酒に『田んぼのために一日一合、Y燗(かん)がえる』という山本さん直筆のキャッチコピーを書いた首かけ札をかけて売り出した。そのラベルには『やまユ』の文字がある。佐藤さんの名前・祐輔のユをつけた決意の純米酒≠ナある。
 「純米酒BOOK」には「日本の田んぼを救うために、純米酒を飲めない人は米を一日一膳食べてもいい。まさに一日一善ですね」と書かれている。

 酒蔵だけでなく国民一人ひとりが、真剣に日本の米づくりを考えなければならない時が来たのかもしれない。

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