TMオフィス地方の魅力発掘プロジェクト
農業の未来にも光を照らす 滋賀県長浜市

  中小企業だからこそできる新しいビジネスを創りたい―滋賀県で照明器具を設計製造するツジコー社長の辻昭久さん(51)は4年前、その夢を「農業」に託した。そして今年、さらに発展したビジネスにチャレンジしようとしている。
  辻さんが手がけた「農業」とは、同社で生産している大型液晶テレビのバックライト技術と、その波長の特性を利用した「薄型HEFL照明装置」による野菜の栽培だ。室内で野菜に光をあて続け、天候に左右されずに、栄養価の高い野菜を育てる植物工場である。
  このビジネスは“次世代の農業”として早くから注目を浴び、2年前には長浜市に新会社「日本アドバンストアグリ」を立ち上げ、長浜バイオ大学とも連携して、本格的な野菜栽培システムの照明や実験装置の販売を開始した。
  「中小企業は大企業に真似できないニッチビジネスで勝負するしかありません。まともに争っても絶対に勝てない。農業なら経験とノウハウで新ビジネスが展開できると思いました」。大学卒業後、大手コンピューターメーカーに就職し、開発畑で活躍した経験をもつだけに、それが身をもってわかる。


大型液晶テレビのバックライト照明技術で栽培されるレタス。昭久社長の胸には次なる挑戦への決意が秘められている

  光で野菜を栽培する風景は、まるで部品工場のようだ。どこか神秘的な赤、青、白の光が24時間、野菜を照らし続ける。蛍光灯による野菜栽培は他社でも行っているが、ここではHEFL照明の特徴を活かし、栽培コストを抑えて低価格での野菜販売が可能になるという。
  これはいける、と思ったが、「私が尊敬してやまない稲盛和夫さん(京セラ創業者)に報告したところ、『ダメだ!』と一蹴されました」。太陽の光を使う農業に比べ、光にお金をかける農業には競争力がないからというのがその理由だった。
  辻さんはかつて、会社経営の“どん底”を経験した時、「稲盛哲学」に救われたことがある。それ以来、稲盛哲学を学ぶ「盛和塾」に入会し、指南を仰いでいる。
  稲盛氏の言葉に「既存農業と競争してはいけない」と気づき、植物工場への挑戦を続ける一方で、「農業との共生」をテーマに、植物工場以外の農業に照明技術を活用しようと、新たな展開を考えている。
  「たとえば農業をサポートするような展開ができるのではないかと思っています。人工の照明は太陽と異なり、光の波長を調整できるので、クローン栽培に役立てたり、ハウス栽培の補光や防虫、病理研究にも使えるかもしれません」
  「農業との共生を目指して、さらなる可能性に挑戦したいです」。その根本には近江商人の「三方良し」が息づいているようだ。明けたばかりの2009年。不況を吹き飛ばす、近江発の心意気に注目したい。


メルマガ配信申込・サイトに関するお問い合わせ 個人情報の取り扱いについて サイト企画運営会社(株式会社TMオフィス)